97年4月SF Book Review


知らない間に4月。というわけで消費税アップ。以後、値段は本体価格を表示します。

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  • SF天文学入門 上・下
    (福江純、裳華房、各1400円)
  • 本来なら、この本は科学ノンフィクションの方に入れるべきなのかもしれないが、やっぱこっちだろう、と思うので、こっち。
    私のページはSFと科学に分けられているが、両方を読んでいる人って、どうもあんまりいないみたい。それと同じで、おそらくこの本を買って読む人も、SFファンがほとんどだろうと思う。実際、SFファン以外には読むのがしんどい書き方になっているし(これはこれで、いいのかもしれないが)。

    正直言って、セーラームーンがどうしたこうした、って話には、私はついていけないのだが、降着円盤についての記事などは面白い。さすが専門家。スモークリングの科学などは、そうかそうか、ふむふむ、と楽しく読めた。

    かなり多くのSFのストーリーが紹介されているので、これから読もう、と思っている人は、あんまり読まない方が良いかも(笑)。


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  • 内海の漁師
    (アーシュラ・K・ル・グイン、早川書房、640円)
  • 表紙には「ないかい」としかルビが振られていないが、「漁師」は「すなどり」と読むのが正しいらしい。「ないかいのすなどり」。さあ、これだけ知っておけば読まなくても読んだ振りができるぞ(爆)。
    しかし、この表紙じゃ「SF」って分からない。多分、わざとなんだろうけど、書店でも全然目立ってない。損じゃないかなー。

    さて本書は、まだちゃんと元気だったらしい(笑)、ル・グイン最新短編集。ル・グインな人は買いだろう。
    でも、実は僕はあんまりル・グインな人じゃないんだよな(笑)。だから、意見はちょっと厳しめかもしれない。その分さっ引いて下さい。

    一番面白かったのは<はじめに>。なんと「SFを読まないということについて」というタイトル。なんてトレンドなんだ、と思ったのは僕だけではないはず。特に目新しい意見ではないのだが、さっぱりと明解。さすが、うまい。

    中の作品では、表題の「内海の漁師」が個人的には一番好き。他は、オチのついたバカ話を除けば、なんだか長編を書くための習作、のような印象を受ける。
    うーん。これは初心者にはとっつきにくいだろう、多分。まあ、そういう短編集だと思って下さい。

    ここで、ちょっと本書を外れた話をする。
    ル・グインやティプトリーを「SF」の中心に据えている人たちって、「コアなSFファン」と呼んでも良いんだろうと思う。
    が一方で、SFファンでもなんでもない人が読んでいる「SF」って、意外とティプトリーとかだったりする。意外と「コア」なSFはちゃんと読まれているのではないか、というのが僕の印象だ。
    この辺りのことを、SF出版関係者は考えて出版戦略を立てて欲しい、と思うのだが。


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