02.03.15 K.Moriyama's diary "地球シミュレータ" Special

2002.03.15 森山和道(moriyama@moriyama.com)

汎用としては世界最速のスーパーコンピュータ・地球シミュレータが報道公開された。簡単なメモをまとめておく。


鉄骨構造2F建て、50m×65mという巨大な体育館のような施設の中に地球シミュレータ本体はおさまっている。

地球シミュレータは地球変動予測の向上や地球内部のコア−マントルダイナクスのシミュレーションを行うためのスパコンである。

大気・海洋シミュレーションでは、大気と海洋を格子に区切り、各格子について温度や流れの向きや速さなどを計算する。

高精度のシミュレーションを行うためには格子間隔をより狭くする必要がある。格子間隔を狭くすると、時間間隔も短くする必要がある(CFL条件)。水平空間解像度が2倍になると情報量は4倍に、さらに時間解像度は2倍にしないといけないので、結局計算量は合計8倍になる。

といった事情があるため、高精度の予測を行うためには、とにかくより大容量で高速なスパコンが必要なのだ。現在、全球シミュレーションでは100km〜200km四方の格子を使うのが普通なのだが、地球シミュレータを使うことで10km間隔まで格子間隔を小さくすることが可能になる。



建物は電磁波をブロックするアルミめっき鋼板で作られており、11個の積層ゴムによる免震構造になっている。だが普通の研究棟は免震ではないので、渡り廊下には免震建築である地球シミュレータ棟が揺れても折れたりすることがないようにスライドするように繋がれている。

横に立つ避雷塔。高さ24m。少し離れて立っているのは、建物に雷の影響が出ないようにするため。


これが地球シミュレータ本体である。とにかく広いところに、ロッカーみたいな感じのスパコンが延々と置かれており、それぞれの機械についた緑のLEDが明滅している様子は、僕らが昔から抱いていたスーパーコンピュータのイメージそのもの。写真では分からないと思うが、このLEDがとにかく派手なのだ。

青い筐体が計算ノードで全部で320筐体。総計算ノードは640。
青緑色の筐体が5120個のプロセッサ間でデータをやりとりするための結合ネットワークで65筐体。
手前と奥にある白いのが磁気ディスクとカートリッジテープライブラリシステムで、シミュレーションの結果やデータなどを格納する。
ピーク性能は40TFLOPS(一秒間に40兆回の浮動小数点演算が可能)。

実際にフロアに降りると、とにかく空調の音がやかましい。拡声器の声すら聞き取れないほど。


ロッカーにしか見えないかもしれないが、これが計算ノード。1m×1.4m、高さは2m。一つの筐体に2ノード、16個のプロセッサが収納されている。

なお地球シミュレータは既に全球大気循環モデルと海洋モデルを使ってテストランを実行している。計算は320ノードを用いて実行性能14.5TFLOPSで実行された。これは70.8%の実効性能である。気象庁の気象用シミュレータだと14〜15%くらいが普通だそうで、このこと自体、相当に驚異的な数字であるらしい。佐藤哲也センター長は「信じられないほどの成果」だと語っていた。

シミュレーション結果自体も分かりやすいもので、前線やサイクロンなど、より細かい大気現象の構造が再現されていた。


床下を這い回るケーブル。報道陣のために開けてあった。平均34mのケーブルが83200本あり、合計した長さは2800キロメートルほどになる。



磁気ディスクとカートリッジテープライブラリシステム(CTL)。1.5PBの容量を誇る。これだけの台数があるのは世界でもここくらいらしい。



照明学会照明普及賞を獲ったというライトガイド方式の照明。蛍光灯ではなく、メンテが簡単で電磁波の出ないライトチューブが使われている。直径255mm、44m、19本。光源は1kWのハロゲンランプで、平均照度は300ルクス。

普段は照明は消されているのだが、メンテナンス&来訪者のためのもの。



報道陣とお歴々。何やらスイッチを押していた(別に意味はない)。

画面は地球シミュレータの稼働状況を表すCG。



地球シミュレータの特色というか、期待されていることにはシミュレーションの定量的かつ質的な向上がある。

たとえば、地球全体の気候変動を扱う上で必ず問題とされている話がある。雲の話だ。

雲には「保温効果」と「日傘効果」という効果がある。保温効果とは地上から放射される赤外線を吸収し、跳ね返す。要するに毛布のように地球を暖める効果のことだ。一方、日傘効果とは太陽からの光を反射して太陽が地球を暖めるのを妨げる効果のことだ。

さて、相反するこの効果、いったいどちらが卓越するのだろうか? 地球が温暖化すると海からの蒸発量は増えるので雲もいっぱいできることになるのだが、そうなったとき、地球はより暖かくなるのかそれとも冷えるのか? 肝心要の問題なのだが、これがまだ分かってないのである。

また、これまでの全球シミュレーションでは、台風発生を直接シミュレートすることはできなかった。台風一個はおよそ100kmくらいあるが、升目がそれよりも大きかったので、台風発生のダイナミクスを捉えることができなかったのである。だが地球シミュレータは升目10kmほどで全球シミュレーションができる。これにより「台風という魚も逃すことなく捉えられる」と期待されている。

また、報道公開のときには全く言及されなかったが、この地球シミュレータは地球表層だけではなく、地球の中でのマントル対流の様子やコア・地殻変動との関係などもシミュレーションすることになっている。今までの計算機では無理だった現実的な値の弾性定数を入れて3次元で計算することができるという。
(ところで、なんで今までは無理だったんですか? 計算速度の問題?)



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