汎用としては世界最速のスーパーコンピュータ・地球シミュレータが報道公開された。簡単なメモをまとめておく。
地球シミュレータは地球変動予測の向上や地球内部のコア−マントルダイナクスのシミュレーションを行うためのスパコンである。
大気・海洋シミュレーションでは、大気と海洋を格子に区切り、各格子について温度や流れの向きや速さなどを計算する。
高精度のシミュレーションを行うためには格子間隔をより狭くする必要がある。格子間隔を狭くすると、時間間隔も短くする必要がある(CFL条件)。水平空間解像度が2倍になると情報量は4倍に、さらに時間解像度は2倍にしないといけないので、結局計算量は合計8倍になる。
といった事情があるため、高精度の予測を行うためには、とにかくより大容量で高速なスパコンが必要なのだ。現在、全球シミュレーションでは100km〜200km四方の格子を使うのが普通なのだが、地球シミュレータを使うことで10km間隔まで格子間隔を小さくすることが可能になる。
横に立つ避雷塔。高さ24m。少し離れて立っているのは、建物に雷の影響が出ないようにするため。
青い筐体が計算ノードで全部で320筐体。総計算ノードは640。
青緑色の筐体が5120個のプロセッサ間でデータをやりとりするための結合ネットワークで65筐体。
手前と奥にある白いのが磁気ディスクとカートリッジテープライブラリシステムで、シミュレーションの結果やデータなどを格納する。
ピーク性能は40TFLOPS(一秒間に40兆回の浮動小数点演算が可能)。
実際にフロアに降りると、とにかく空調の音がやかましい。拡声器の声すら聞き取れないほど。
なお地球シミュレータは既に全球大気循環モデルと海洋モデルを使ってテストランを実行している。計算は320ノードを用いて実行性能14.5TFLOPSで実行された。これは70.8%の実効性能である。気象庁の気象用シミュレータだと14〜15%くらいが普通だそうで、このこと自体、相当に驚異的な数字であるらしい。佐藤哲也センター長は「信じられないほどの成果」だと語っていた。
シミュレーション結果自体も分かりやすいもので、前線やサイクロンなど、より細かい大気現象の構造が再現されていた。
普段は照明は消されているのだが、メンテナンス&来訪者のためのもの。
画面は地球シミュレータの稼働状況を表すCG。
たとえば、地球全体の気候変動を扱う上で必ず問題とされている話がある。雲の話だ。
雲には「保温効果」と「日傘効果」という効果がある。保温効果とは地上から放射される赤外線を吸収し、跳ね返す。要するに毛布のように地球を暖める効果のことだ。一方、日傘効果とは太陽からの光を反射して太陽が地球を暖めるのを妨げる効果のことだ。
さて、相反するこの効果、いったいどちらが卓越するのだろうか? 地球が温暖化すると海からの蒸発量は増えるので雲もいっぱいできることになるのだが、そうなったとき、地球はより暖かくなるのかそれとも冷えるのか? 肝心要の問題なのだが、これがまだ分かってないのである。
また、これまでの全球シミュレーションでは、台風発生を直接シミュレートすることはできなかった。台風一個はおよそ100kmくらいあるが、升目がそれよりも大きかったので、台風発生のダイナミクスを捉えることができなかったのである。だが地球シミュレータは升目10kmほどで全球シミュレーションができる。これにより「台風という魚も逃すことなく捉えられる」と期待されている。
また、報道公開のときには全く言及されなかったが、この地球シミュレータは地球表層だけではなく、地球の中でのマントル対流の様子やコア・地殻変動との関係などもシミュレーションすることになっている。今までの計算機では無理だった現実的な値の弾性定数を入れて3次元で計算することができるという。
(ところで、なんで今までは無理だったんですか? 計算速度の問題?)