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『技術と経済』1999年4月号掲載書評

クリティカル進化論 『OL進化論』で学ぶ思考の技法
北大路書房刊
99年4月10日
188ページ 定価1400円
著者 道田泰司&宮元博章
まんが 秋月りす 『OL進化論』より
評者 森山和道

 この本の書影を見て「なんだふざけてるのか?」とか「マンガ本か?」と思ってしまった、あなた。あなたはこの本を読む必要がある。
 本書はクリティカル・シンキングという思考法の本である。クリティカル・シンキングとはすなわち、先入観を捨て、物事を冷静かつ論理的、そして多面的に見るための思考技法である。平たく言ってしまえば、物事の表面だけではなく、右から見たり、左から見たり、裏返して見たりすることを推奨する思考法、それがクリティカル・シンキングなのだ。本書では4コママンガ『OL進化論』に日常生活での材を取り、クリティカル・シンキングを解説する。
 今日は情報化社会と呼ばれ、情報の取捨選択が必要だということは誰もが自覚している。だが、そのトレーニングができている人は実に少ない。なんだかんだ言っても人は他人の意見や権威、見かけに騙されやすい。つい物事を単純化して見てしまう。思い当たる人は多いのではなかろうか? 例えば、身近にいる数人の評価だけで物事の評価・判断を下したことはないだろうか? 自分の家族が大好きだと言ったからといって、それがイコール世の中の評価とは限らない。ところが、実際の会社の中ではそういうことがよくあるような気がする。おっと、何の調査もしていないのだから、これ自体一つの思いこみでしかないことは言うまでもない。
 もちろんこの種の「独断的思いこみ」には良い面もあるのだけど(そうでないとやってられないことも多い)、その一方で、新しい考えやアイデアを、生んだり判断したりする場合には向かない。要するに、人は極めて独断に落ち込みやすく、柔軟かつ論理的な思考、分析的かつ客観的な判断というのは、かなり意識しないとできないのである。
 そこで本書では、身近な日常を描いた4コマの世界でそういう考え方を学ばせようとしているわけだ。論理的かつ柔軟に考えること。これが本書の主張である。「考えること」が必要な世の中、こういう本をめくって見るのも悪くないのでは?
 もっとも、本書をめくるような人は、もともとクリティカル・シンキングができる人のような気もするのだが…。

もりやま・かずみち
サイエンスライター


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