NetScience Interview Mail
2001/02/15 Vol.132
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【梶田秀司(かじた・しゅうじ)@機械技術研究所 ロボット工学部 運動機構研究室】

 研究:2足歩行ロボットの制御
 著書:『歩きだした未来の機械たち −ロボットとつき会う方法−』ポプラ社

ホームページ: http://www.mel.go.jp/soshiki/robot/undo/kajita.html

○二足歩行ロボット、その制御の研究者、梶田さんにお話を伺います。
ロボットブームではありますが、技術的な話はほとんど触れられていないようです。
素人でも、もうちょっと詳しいことが知りたくなりました。(編集部)



前号から続く (第3回)

[04: スキルレベル]

科学技術ソフトウェア
データベース

○それにしても不思議だなあ。なぜできないのかがよく分からないです。

■一言で言っちゃうと、制御理論自体が未完成なんです。実験環境、シミュレーショ ンではうまく言っても、それは、モデルにディペンドしているわけです。ですから、 モデルが間違っているといつまで経っても実環境ではうまくいかない。
 精密に測ってやればいいんだけど、「モデル化誤差」っていって、測りきれない部 分がどうしても出てくる。計算機の中ではちゃんと動く、でも実際のロボットにはガ タがある。あるいはたわみがあってガタガタしちゃったりする。これはモデルにでき ない部分なんです。そして、それ自体が大きな問題になるわけです。だから手先がふ るえていたりとか、ちょっと変えるとダメになっちゃうんですよ。

○ふーむ…。

■もう一つ問題はあるんです。ハードウェアのフィードバック制御と人工知能の間に存在する問題です。ロボット屋はよく「スキル」って言うんですけどね。

○それはどういうものなんですか。

■日本語で言えば「技能」ですが、先ほどの話、つまりサーボレベルよりもう一つ上で、たとえば何かを掴むときに指をどう置くか、という問題です。そういうことを一生懸命研究しているグループがあるわけです。行列ずらずらの論文なんだけど、それがロボット研究のメインストリームだと言ってもいいでしょう。

○スキルレベル、ですか。

■ええ。人間は当たり前のようにやっていますね。モノを掴むとき、いちいち頭で考える人はいない。でも、モノの形状に対して指をどう置くかという問題は、絶妙のコントロールが必要ですね。

○ええ。

■たとえば歩行制御でいうとね、「濡れてるな」と思ったら人間はつま先だちになるでしょう。つまり、環境に応じて、目的を達するように、うまく動作計画をしていくわけです。

○いわゆる「知能」ですか?

■うーん、「知能」に近いんだけど、フレーム問題などとは全く違う問題です。ロボ ットの研究者はほとんど、そこをやっているんです。「フレーム問題」なんて、言葉 さえ知らない人が多いですよ。

○あ、そういうもんなんですか、実際の業界では(笑)。

■ええ。そもそも、AI派でも、フレーム問題を議論している人はほとんどいないです。 松原仁さん(はこだて未来大学)や、橋田浩一さん(電総研)くらいじゃないかなあ。

○ふーん。

[05:計算幾何学をカリカリやっているような人が主流]

○すみません、そのスキルレベルの話ですが、具体的にはどんなことをしているんですか。

■数学的にかちっとした話です。ええーっと、どう説明すればいいかなあ…。そうですね…。
 まず、関節が一つあると一自由度ですね。この関節の角度を座標軸にするんです。指が3自由度だったら3次元。そうすると、指の形がその3次元の空間の中で、空間の中の点として表現されるわけです。指のかっこうそのものがね。

○はあはあ。なんとなく分かります。

■その点が物体に触るとしますね。そうすると、たとえば指が到達できない領域はそ の座標空間の中で仮想的なある領域として表現されますよね。ですから、ものを触る ときには、領域に対して直角になるように軌道を設定してやるとかするわけです。

○ははあ。なるほど。

■しかも指の自由度は実際には3じゃない。仮に10あったとすると10次元の空間 のなかで立体が表されて、そこへのアプローチの軌跡として指の運動を制御してやる ということになるわけです。

○ふむふむ。

■計算幾何学と密接に関わる領域なんですけどね。そういうことをカリカリやってい る人が主流なんです。
 一方で、ブルックスのSAとか非線形振動子で動きを計画してっていうことをやっている人はなんか目立つんでマスコミでは取り上げられやすいですけどね。でも、亜流と言ってしまって良いと思います(笑)。それなりのインパクトはありましたが。

○なるほど。でも多分、彼らが取り上げられたのは、目立っているからだけではないんじゃないでしょうか。たぶん、主流への失望が背景にあったんじゃないですか? 

■うん、それもあったと思いますね。

○「新しい流派の人ならば何かやってくれるんじゃないか」という一般人からの期待があったんじゃないかと。
 80年代にも、ロボットブームってあったじゃないですか。

■ええ、ありましたね。

○ロボットへの期待って、上がったり下がったりですよね。やっぱり繰り返し思うのは、なぜ僕等の欲しい「アレ」ができないのか、ってことなんですよ。みんなが心に抱くロボット。
 というのは、現段階で出ているモノは、あんまり「ロボット」って気がしないっていうのは、みんなが思ってるんじゃないかと思うんですよ。なんていうんでしょうか。わくわくするものがないっていえば良いんでしょうかね。ここに来て、ちょっと状況が変わってきましたが。
 だから僕が知りたいのは結局、研究者はどういうアプローチで、それを実現しようとしているのか、それともしていないのか、ってことなんです。

■うん、すごく気持ちは分かるんだけど、どう答えたらいいんでしょうね…。

○取りあえず、先生の研究、歩行の研究の実際をとおして、その辺をボチボチ教えて頂ければ有り難いです。

■そうですね…。

[06:ロボット研究者の実際]

■これ(梶田さんが数年前に研究していた鳥脚型2足歩行ロボット、http://www.aist.go.jp/MEL/soshiki/robot/undo/kajita/biped.html)、僕らがだい たい設計するんですね。これでも200万くらいかかったかな。それで出来てきたものを、いろいろいじるわけですよ。

○ん?

■いや、メカニカルな問題がいっぱいあるんです。工場から出てきたものがそのまま使えるわけじゃないから。もう、涙涙の話がいっぱいある(笑)。たとえばワイヤーのテンションが足らないから、ギターの部品を買ってきて、分解して自分で旋盤回して改造したりするんですよ。
 そうですねえ…。メカをつくるのに、形になるのにまず半年。そのあと手直しして、細部は手作り、回路はノイズだらけ。いろんなことをやっていると、あっという間に2年くらいかかるわけです。

○ふーむ。

■そうすると、ようやくコンピュータのソフトをのっけて動かすんですよ。するとまた色んな問題が出てくるんです。で、いろいろやってダメだって放り出しちゃったりするんですね、みんな(笑)。
 ともかく、ロボットそのものが大変なんです。形にするだけで苦労苦労で、ホンダさんみたいな綺麗なものなんてとてもできません。

○それはやっぱり、人手がないとか、予算がないとかいう問題もあるんですよね。じゃあお金がいくらでもあったら?

■うん。ホンダのロボットが、いまうちに3台くらい来てるんですけどね、HRP(Humanoid Robotics Project, http://www.mstc.or.jp/hrp/main.html)で。  ハードのあとに様々な制御の話があるんです。まあ、いわゆるプログラムですね。フィードバックのパラメーターを一つの関節につき、一個一個決めていってやったりするんです。とにかくやることがいっぱいです。

○ふむふむ。HRP関連の話はまたあとでお伺いするとしましょう。

[07:ホンダのロボットにおける「コロンブスの卵」]

■取りあえず、僕らが目指しているのはホンダの後追いです。ホンダがやってることをまずできるようにならなければダメです。でないと納税者の人も許してくれないでしょうしね(笑)。
 ビデオで、床を傾けてもバランスしてたでしょ。あれはすごいです。あれができるのはホンダだけです。

○では、そこから先へいくには何が必要なんでしょうか。

次号へ続く…。

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◇毎日新聞 科学環境ニュース マウスのたんぱく質製造、核心部分の遺伝子解読−−理研
http://www.mainichi.co.jp/eye/feature/details/science/Bio/200102/08-1.html

◇毎日新聞 [もっとサイエンス]富士山 近ごろの“ご機嫌”は!?
http://www.mainichi.co.jp/eye/feature/details/science/Bio/200102/05-1.html

◇明治時代から雪に弱かった東京 明治の読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/yomidas/meiji/meiji34b.htm

◇zdnet バンダイ,コミュニケーションロボット「BN-1」のネット予約を21日に開始
http://www.zdnet.co.jp/news/bursts/0102/09/bandai.html?0902010211

◇Microsoft OfficeとVBAのポータルサイト モーグ
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NetScience Interview Mail Vol.132 2001/02/15発行 (配信数:24,245 部)
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