click here, for this site !!

『日経サイエンス』掲載・森山和道の読書日記・99年12月号

〜20世紀回顧、歴史と未来への一里塚〜

 間もなく今世紀最後の年がやってくる。書店にも回顧の本が並ぶようになってきた。科学を取り扱っている本も多い。『20世紀どんな時代だったのか 思想・科学編』はその一つ。読売新聞の連載のうち思想・科学に関するものをまとめた本である。思想編、科学編に加え、歴史エピソードや座談会などで構成されている。科学エピソードとしては理研の歴史、物理学者・彦坂忠義、女性科学者・湯浅年子、そしてカール・セーガンなどが取り上げられている。それぞれ感慨深い読み物だ。

 工業技術、エネルギー、生命、情報など科学技術の急速な進展は、社会状況を変質させた。特に戦後の急激な生命科学の進展は思想面へも多大な影響を与えたが、また逆に、科学技術の発展には社会・経済の状況が大きくきいてくることもはっきりした。科学・技術は単独ではありえないのである。今後どのように技術が進展するのかという予測が困難な理由は、ここにある。

 その一方、単にどのくらい発展しうるかという可能性のみを考えるならば難しくはないと断ずるのが『21世紀の技術』である。なぜならば基礎技術が実際に開発された後、実用化されるまでにはおおよそ十数年かかるからであり、注意深く実状を考察すれば未来を洞察することは可能であるからだ。

 本書はOECD(経済協力開発機構)が98年に出した報告書の翻訳である。内容は主に遺伝子工学、情報工学、そして環境工学などが社会に及ぼすだろう影響の考察である。データが示されずに予測のみが淡々と書かれている点は不満だが、現状と展望をざっと眺めるぶんには良い。基礎教養として目を通しておこう。

 間違いなく今世紀を特徴づける技術の一つに、宇宙開発技術が挙げられるだろう。『最新 宇宙開発がよくわかる本』は先頃77歳で再び軌道に上がったグレンらの話から歴史を振り返りつつ、国際宇宙ステーションや日本の宇宙開発の現状まで解説する本である。コンパクトでありながら押さえるべきところはきっちりと押さえられていて手軽に宇宙開発の歴史を復習することができる。また日本もけっこう宇宙開発やっているんだということは意外と知られてないようなので、こういう本で少しでも伝わればと思う。

 そして忘れてはならないのが人類の月面着陸である。『人類、月に立つ』は巨大計画アポロの全貌を描こうとした本である。上下巻の紙幅を費やしてもさすがにそれは難しかったようだが、確かにずっしりと歴史が詰まった本である。

 上巻では1号による訓練中の火災事故、初の月周回飛行を成し遂げた8号らを経て、月面着陸した11号、続いた12号までが描かれる。下巻は13号の事故で始まり厳しい批判に晒されつつも遂行され続けた科学ミッションとしての側面が中心となる。エピローグでは、その後の飛行士達の人生模様が描かれている。宇宙飛行士達の描写は実に生き生きしている。8年がかりの取材の成果だ。

 当初20号まで予定されていたアポロは財政上の問題を理由として17号で打ちきられ、月着陸は歴史となった。だが、それは依然として、未来への一里塚でもあると胸に刻んでおこう。

もりやま・かずみち
サイエンスライター


Return to Index