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『日経サイエンス』掲載・森山和道の読書日記・99年4月号

〜宇宙の深淵〜

  今年は『すばる』の年になるかもしれない。その願いを込めて、今回は天文関係の本を取り上げる。

 まずは『世界最大の望遠鏡『すばる』』。『すばる』は、日本が400億円をかけてハワイ・マウナケアに作った8m光学赤外線反射望遠鏡だ。正確な有効口径は8.2m。単一鏡としては世界1の大きさを誇る。様々な新しい工夫が凝らされており、研究者達の期待を一身に集めている。特に赤外領域では色々と仕事をしてくれそうだ。

 その主な目的は二つ。一つ目は太陽系外の惑星系を直接発見すること。二つ目は深宇宙を探査し、ハッブル定数とΩを決定し、宇宙の運命を探ることである。

 本書はその推進者の一人による本なのだが、一般読者向けからはやや外れているのが残念。『すばる』製作上の工夫や苦労、望遠鏡の歴史を綴るのが本書の主眼なのだが、『すばる』で何をやるのかという点が今ひとつ分かりにくいのだ。苦労話にしても、もう少し面白く書けたのではないか。かえすがえすも残念ではあるが、出版そのものは嬉しい。

 天体望遠鏡を動かすのは、当然のことながら人である。『天体の狩人』はビデオと本が一つにパッケージされたユニークなシリーズの一つで、ハワイ・マウナケアにある各国天文台の研究者、技師、サポーターたちにインタビューしたもの。研究者達がどのような環境で、どんなことを考えて天体望遠鏡を稼働させているのか、覗くことができる。先の『すばる』のことも扱われている。

 どちらかというとビデオ(64分)に力が注がれており、本はおまけのようなものなのだが、アン・ドルーヤンのインタビューなども収録されている。また、各天文台やプラネタリウムなどのホームページのURL一覧は嬉しい。もっと日本人研究者にインタビューしてくれていれば、もっと嬉しかった。天文学者たちがいったい何をやっているか、少しは身近に感じられるかもしれない。

 最近は、宇宙の写真をただぼーっと眺める人も増えているらしい。この世のものとも思えない、人間の想像力を遙かに越えた星々の姿に、癒しのようなものを感じるらしい。

 それらの写真のほとんどは、ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したものである。ところが打ち上げ当初、ハッブルはピンぼけであった。『ハッブル宇宙望遠鏡』はその修理の模様を克明に追ったドキュメントと、その後の成果を紹介する一冊。多くの研究者・技術者たちの共同作業の描写が素晴らしい。写真を多く使って極めてやさしく書かれているが、丹念なつくりは大人の読者の鑑賞にも十分耐えるできである。しかしながらやはり、こういう本はぜひ学校の図書館に備え付けてもらいたいように思う。子供時代にこういう本に出会うかどうかは、その後の人生に大きな影響を与える。

 もう一つ、「大きな影響」を与えられるかもしれない本を。『インパクト!』はタイトルそのまま、地球への小天体の衝突の可能性を扱ったサイエンス・エッセイであり、警告の本である。著者は、ぶつかるかどうかは問題ではなく、いつぶつかるかが問題なのだ、という。そして、そろそろ数千年の単位で文明を考慮すべき時だ、と。確かに、その通りかもしれない。

もりやま・かずみち
サイエンスライター


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