いわゆる町工場の人たちの技術が現在の日本を作り上げていることに対する再注目が行われている。百万分の1ミリを削り先端技術を支える技術もさることながら、指を飛ばしながら鉄を削りプレス機を扱ってきた人々の話は自らの手で人生を拓いてきた自信にあふれ、読み物としても非常に読み応えがある。自らも旋盤工である著者が半生を織り交ぜながら綴った『ものづくりに生きる』はそんな本の一つである。
なぜ職人が注目されているのか。私は、力強い言葉を聞きたいという思いが読者の側にあるのではないかと考えている。著者は「技能とは、人間の体温を通してしか、ものに実現することができない技術のことをいう」と語っている。手や体をとおして実際に体験することが重要だ、というのである。言葉の陰には「ほんもの」をつくっている、という圧倒的な自信がある。
もう一つ、別の方向から「ものづくり」の先端を見てみよう。「つくる」というのは人類共通の性向であるとする、東京大学生産技術研究所による『工学の絵本』が最適である。ビジュアルをふんだんに使って東大生産研の成果と歴史を紹介する分厚いパンフレットのような本だ。物質の実質をミクロで究め、不可視だった現象を可視化、時系列を伴う複雑現象を解析し、分子・電子のレベルでものをつくる。これが現在の工学の最先端である。
現在の工学は「もの」だけでなく、ものの周辺の「こと」、事象も扱うようになっている。本書プロローグにこうある。「現象の本質を知ることは、科学全般が目的とするところだ。加えて工学には、新たな現象を誘導すること、現象を新たにつくることが目的にひとつになりうる」 先端領域では科学と工学が再び融合しつつあるのだ。
『化学の未来へ』もまた、変わりつつあるジャンルを扱った本である。エレクトロニクスや医療など、先端技術領域は急速に分子レベルの精度に近づいている。これらはまさに化学が扱ってきた領域であり、これまで以上に化学が重要な役割を果たすのだというコンセプトで編まれた化学先端紹介本だ。複数の著者によって書かれた内容は生命、技術、社会と3部に分けられており、アポトーシスや抗精神薬、肥満遺伝子の話から、高機能材料やキラル、さらに農薬やプラスチックなどと幅広いが、全体に化学は社会と深く関わりあてきた技術であり、現在噴出する各種問題にも化学で挑むという視点がかいま見える。
ただ本書に直接関係ない話で恐縮ながら一つ。化学の本にはこういう分担執筆の本が多いが、できればそろそろ、化学全体の方向を指し示しさらには駆動するような、一人の著者による強力な視点で描かれた一冊が読みたいように思う。
ともかく科学がますます技術と不可分になりつつあることは間違いない。20世紀前半は理論の時代、後半は観測の時代であったと位置づける『天文学の20世紀』をめくっていても実感する。観測手段の広がりとともに動的な宇宙像を描き出した天文学の発展をおうことができる本だが、雑誌連載をまとめなおしたものなので太陽系外惑星の発見など最近の成果については触れられていないのが残念である。だが今後天文学分野ではさらに大きな発見が期待できるので、その前に予習・復習しておきたいところである。
もりやま・かずみち
サイエンスライター