NetScience Interview Mail
1999/03/04 Vol.043
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【春山純一(はるやま・じゅんいち)@宇宙開発事業団 つくば宇宙センター
                   先端ミッション研究センター】
 研究:SELENE月探査計画、彗星研究

○NASDAの春山純一氏にお伺いします。
 今回は宇宙探査と宇宙開発について、また長期計画についてなど。
 8回連続予定。(編集部)



前号から続く (第6回/全8回)

[14: 宇宙探査と宇宙開発]

○昔は僕も宇宙にはバンバンドンドン出れば良いんだ、と脳天気に思っていたんですが、いろいろやっていたり、人に会ったりしている間に、「宇宙開発はカネの無駄使いだ」ということを非常に多くの人に言われたんですね。地球の重力井戸から抜け出すのに大量のエネルギー、大量の資源、大量のカネを使って、ほんのちょっとのものしか送り出せない。そんなことをやる余裕は人類にあるのかといったことまで言われたことがあるんです。春山さんらもそういうことを言われることがあるんじゃないかと思いますが、どう反論なさっているのかお伺いしたいんですが。宇宙開発、あるいは宇宙探査を推進していくにあたって?

■まあ、あまり大きな声で言えないんですけど、NASDAの職員という立場を忘れれば「自分が知りたいことがあるんだから、それを知りに行って何が悪い」っていうのが正直言ってありますね。何が悪いというより「知りたいんだから行きたい」ってことですね。
 で、宇宙開発っていうのは私の心の中ではまだ、無駄なことが多いかなっていうのがあるんですがね。

○宇宙探査に関しては「知りたいから行きたいんだ」、ということですね。

■僕の場合サイエンティストなんで、知るために行くっていうのは、他の人が無駄って言えばそれは仕方ないかもしれない、でも知りたいし、多分それを知ったことで他の人にも知的なものを供給できるんじゃないかと思うんですね。まあ「知的なものなんかいらない」っていうんだったら、それはしょうがないと思うんですね。でもそれは私が判断することではないんで。

○ええ、ええ。

■あと宇宙開発ってことになると、問題はその目的ですね。
 宇宙開発の目的ってなんだろうとなると、私自身でも、ちょっと分からない。たとえばJEM(国際宇宙ステーション)とかもですね、あれがどの程度のものなのかっていうのは正直言って分からない。
 実はですね、僕も最初は批判的だったんですよ。宇宙ステーションとか作る金があったら探査機もっと増やしてよ、と思ったんですが、でもですよ、やっぱりね、インフラがあると物事って発展するんじゃないかと思うんですね。たとえば携帯電話でもイリジウム計画なんかでも、人工衛星を打ち上げなければ最初からできなかった話ですよね。人工衛星を打ち上げてみたら、いろいろなことが分かってきて、それを利用するってことを考える人も出てきたわけで。だから宇宙ステーションは今のところ、今の時点ではね、たとえば何か無重力環境を使って合金を作れるんじゃないかという話もありますが、そういうんじゃない、違うブレイクスルーがあるんじゃないかなと思うんです。
 これは日本人だから思うのかもしれませんが、「できないと見えない」ということがあるんじゃないかなと。

○うん、そうだろうと思います。

■逆にインフラがあったら、それを利用する才能があるんじゃないかなと思うんです。だから今こうして動いているというのは、何かしらそういう、僕の知らないレベルでのみんなの合意で動いているんだろうなと思うんです。

○そうだろうとは思います。技術開発ミッションなんかは完全にそういう視点で行われているんでしょうね。で、そこらへんの価値は分かります。一方で、最近別の方面からの反論もありますね。地球全体の問題ですね。いつまでも上向きの発展を願うようなのはいけないんじゃないの、という意見もありますね。僕は個人的には発展しない社会なんか維持してもしょうがないと思っているんで、ある意味で下の方が犠牲になっても、と思っていたんですが、最近それがちょっと揺らいでいるのを感じるんです。…文明観的なことで、そんなこと考えていても仕方ないんですけどね。

■それはみんなそうでしょうね。宇宙開発だけじゃなくて、一般の人でも。一方では夢をとか言いながら、もう一方ではお金が自分のところに入ってきたらっていうのがありますからね。
 一つは、何ができるのかが見えない、見せていないというのがありますね。かなり見えてきているとは思うんですよ、宇宙利用というのは。だからそういうものがみんな、一般の人も含めて見えていないからじゃないかなと思います。でも「ふらつく」というのはしょうがないんじゃないかなあと思います。
 逆にみんながどっちかだけに揺れちゃったら、それは多様化した社会じゃなくて、画一化した社会だから逆に危険ですよね。みんなが自分の心の中でも多様なaccepterを持って、その場その場で判断していくということで良いんじゃないかな。
 多分、情報不足なんですよね、我々は。あるのにないと思っているところもあるし、いまできていなから仕方ないってものもあるし、原則的にないっていう考え方もあるんですよねきっと。だからそういう意味では情報が不足しているんだったら、態度はふらついていても仕方ないとおもいます。

○ふーむ。

■だから正直いうと、サイエンス面では、どんどん外へ出ていかないと駄目、生命の起源を知るためには地球だけじゃ駄目だっていうのがあるから「行く」っていうスタンスが自分の中でもできているんだけど、宇宙開発に関してはふらついているんです。

○ふーむ。でも行くためには宇宙開発しないといけないし、っていうのがあるんじゃないですか?

■でも宇宙ステーションなくっても宇宙探査はできますからね。

○(笑)。じゃあ、たとえばローバーは欲しいんだけども、って感じですか。

■いや、ローバーも本当に必要かどうかは別ですよ。ローバーが最適なシステムがどうかは今僕らが考えているところなんですよ。あるいはホッパーのようなものが良いのかもしれないし、あるいは低空を飛ぶようなものはできないのかと言っているところなんですよ。多少エネルギーは要っても、リモートセンシング用の低高度システムのためには多分そっちのほうが良いんです。ローバーなんてのはもう、所詮動き回れるのは数キロじゃないかとね。

○ふーむ。

■そういう議論がいま、やっとでき始めたところなんですよ。今まではローバーをやりたいとか言ってても、そのローバーを使えるミッションができるのはいつなの?ってところがあって、みんな真面目に言わなかったんですね(笑)。まあ言ってたのかもしれないけど、報告書とか見ても、どこまでが本気なのか分からなかった。

○ああ、そういう感じです。「どこまでが本気なんだろう」って気がするんですよ。

■ねえ。だから、まだまだ本気になってなかったと思いますね。やっと、今度のセレーネとかでミッションユーザー、つまり科学の側の意見をきちんと入れてきたり、NASDAの中で自分たちがミッションを組織していくべきだっていう態度ができてきて、やっと「何をすべきなのか」ということが具体化してきたんです。

○ええ。

■見ていると、まどろこっしいんですね。あっちの人の意見をまとめてこっちへ持ってきたりと。例えば地球観測衛星のデータを使いたい人がここにいる、作りたい人がこっちにいる、でも作る人はあっちにいると。でそれを取りまとめるのがNASDAだと。あっちの意見とこっちの意見を取り混ぜて、なんとなくほんわかしたものを作ってきたと。
 で、それと同じように、宇宙開発の方も、いろんな人の意見を何となくほわ〜とまとめてきたと。そういう感じがするんですよ。

○うーん。

■だけど予算はないと(笑)。だから、全然、何もないんですよ。だけどいま、具体的にやる人がNASDAの中に入ってきて、自分でやりたいのはこれなんだと主張し始めたんです。
 JEMでもそうなんですよ。宇宙ステーションを作って何をやりたいの、っていうのが今まで分からなかったんだけど、曝露部に天体望遠鏡を置いてみたいとか、地球周辺の粒子の環境を知りたいとかって人が、NASDAの「中」で意見を言うようになってきたから、良いか悪いかは別としても、具体化してみえてきたんですね。そういう段階になってきたのかなと思います。

[15: 長期計画と短期計画、ニーズとシーズ]

■ちょっと話は変わるんですが、長期計画はあった方がいいと思いますか。たとえば十年単位の奴は。

○国策としてはあったほうが良いと思いますが。NASDAという組織が、どう考えているのかを示す上でも。

■うん、そういう気もするんですけど、一研究者としての立場からすると、ちょっと違うんです。いまの我々は良いんですね、自分で計画つくって自分がそのタイムラインに乗れるから。だけど次の世代の人達って、10年スパンの研究スケジュール作られちゃうと、そこから外れられないような気がするんですよ。

○ああ、なるほど。そうかもしれないですね。特にサイエンスだと。面白いテーマも変わっちゃうかもしれないですしね。

■うん。まあその時は変えれば良いって言うかもしれないけど、こういうのは得てして、一本決まってスタートしちゃったら、なかなか変えられませんからね。
 まあ結局、両立が良いのかなあと。大きな計画が一つあって、細かいのもどんどんやっていければ良いのかなあと思っているんですけどね。

○ふーむ、なるほど。
 技術開発は多分、長期計画がないと苦しいところがあると思うんですよね。でもサイエンスはせいぜい10年とか、5年とか、そういうスパンに抑えておいたほうが良いのかも知れないですね。でも一方で宇宙開発と足並み揃えないといけないところもあるだろうし。そこらへんがサイエンスとしての宇宙探査の難しいところかもしれないですね。

■そうか、宇宙科学、サイエンスと、サイエンスだけじゃないけど開発をサポートする技術開発を、分けて話さないといけないですね。

○難しいですね。

■うん…。そこは、よく話になるんですよ。技術があればそれを利用するものを考えますよ、という人もいるわけですよね。でも技術屋さんは、ユーザーの意見がなければなかなか動けない。作っても意味のない物じゃあ仕方ないわけですからね。それは非常に正しい態度かなと思うんですけどね。

○ニーズとシーズですね。

■そうですね。幸いなことに僕らはニーズ側もシーズ側も同じ研究室の中にいるんで、いい環境にあるんだとは思いますけどね。

次号へ続く…。

[◆Information Board:イベント、URL、etc.]

■書籍:
◇雑誌『科学』3月号 創刊800号記念特集:いま,科学の何が問われているのか
 現代の科学と社会が抱えるさまざまな具体的課題に,歴史的,科学論的に迫る.
 大増ページ定価税込1400円(送料108円)岩波書店 
http://www.iwanami.co.jp/kagaku/

◇雑誌『生物の科学 遺伝』3月号 特集:自然環境に生物を学ぶ
 本体1100円+税  裳華房 http://www02.so-net.ne.jp/~shokabo/
 子どもたちの問題意識に寄り添ったユニークな教育実践例を紹介.

■URL:
◇バイアグラ関連情報(厚生省)
http://www.mhw.go.jp/search/docj/topics/viagra/tp0724-1.html

◇新学習指導要領(文部省)
http://www.monbu.go.jp/news/00000313/km.html

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NetScience Interview Mail Vol.043 1999/03/04発行 (配信数:11,771部)
発行人:田崎利雄【住商エレクトロニクス・ネットサイエンス事業部】
編集人:森山和道【フリーライター】
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