NetScience Interview Mail 2004/04/22 Vol.274 |
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研究:運動の学習と制御の神経機構、脳内の時間順序表現メカニズム
著書:小脳における上肢随意運動の学習機構の解明.
『ブレインサイエンスレビュー2001』(伊藤正男,川合述史編/医学書院、2001:216-243.)
到達運動の制御と学習の神経機構.
『脳の高次機能』(丹治順,吉澤修治編/朝倉書店,2001:106-118.)
研究室ホームページ:http://www.med.juntendo.ac.jp/kenkyu/09index.html(建設予定)
研究内容の参考になるウェブサイト:
▼HFSP NewsLetter No.13 ―多才な運動を実現する脳の機構の解明へ―
http://jhfsp.jsf.or.jp/news/letter/no13/nl-05.html
▼HFSP NewsLetter No.17 ―ノイズが開く運動制御の可能性―
http://jhfsp.jsf.or.jp/news/letter/no17/nl-03.html
▼AIST Research Hot Line 手の交差で時間が逆転 ―脳の中の時間―
http://www.aist.go.jp/aist_j/aistinfo/aist_today/vol01_06/vol01_6_p12.pdf
○腕をコップに向けて伸ばす、このような運動を「到達運動」と言います。このとき、脳のなかでは腕を制御するためにある種の計算が行われていると考えられています。ではそれはどのような規範に基づいているのでしょうか。北澤先生はこのような運動制御における小脳の役割について研究しておられます。
また、北澤先生は実に不思議な現象を発見しました。右左の手をポンポンと叩く。どちらが先に叩かれたのかは、目をつぶっていても分かります。ところが、腕を交叉するとこの時間順序の判定が逆転するというのです。これはいったい何を意味するのでしょうか。
身近な身体に関する研究の話です。不思議なことは私たちのすぐそばにいくらでもあるということを感じて頂ければと思います。(編集部)
…前号から続く (第11回)
■時間については色んな面白い話があります。たとえば、ふと時計を見たときに、針が止まっているような感じがすることありませんか? ○ああ、あります。一瞬止まっていた針が、動き出したような感じがするときが。秒針が止まって見えることがあります。
■ありますよね。そういうことが実際に脳のなかで起きている、というんです。2001年の「ネイチャー」に出た仕事なんですけども。 ○どういう実験なんですか。 ■これはですね、ここにゼロという数字が書いてあって、パッとそこにサッケードしろと被験者は言われているわけです。サッケードすると、1に変わるんですね。そして、1,2,3,4とカウントアップしていく。 ○別のところからパッと視線を移して時計を見たときと同じ条件ですね。 ■2,3,4はきっちり一秒間で切り替わるんですけども、1を見せる時間だけを変化させるわけですね。2,3に比べて、1のところの時間が長かったか短かったかということをジャッジメントさせて、ちょうど1秒と感じられる1の長さが何ミリ秒だったか測ってみるわけです。 ○なるほど。それで? ■するとですね、だいたい800ミリ秒くらいが一秒だと感じられたんです。 ○ん? ■ということは、200ミリ秒くらい「時間が止まっている」と。 ○「止まっている」? ■つまり、800ミリ秒、針がここにいるとすると、それが、1秒くらい止まっていたという感じになるわけですね。主観的に。 ○つまり1が800ミリ秒に感じられるってことじゃなくて…… ■1が800ミリ秒のときに、1秒に感じられたということです。2,3と同じ時間にね。 ○ああ、なるほど。 ■ほんとは1は800ミリ秒しか提示されてないんだけど、1秒に感じられたと。 ○じゃあ、自分のなかで800ミリ秒が1秒に延長されているんですか。 ■そういうことになりますね。それはサッケードにかかる時間プラス50ミリ秒くらいなんですね。サッケードの幅を変えてサッケードの時間を変えると伸びる時間幅も変わります。ここに出ていた1という数字は、自分が眼を動かし出す前からそこにあったと脳は解釈しているらしい。 ○なるほど。足してるんだ。 ■ええ。眼を動かしている時間の分だけ、秒針はそこに長い時間いたように思うから、それが自分のふだんの秒針に動きに比べると長くて、「えっ、止まってるんじゃない?」って思うと。 ○なるほど、面白いですねえ。 ■面白いでしょ(笑)?
○僕はウェブで日記を書いているんですけど、そこで『自我が揺らぐとき』(トッド・E・ファインバーグ/岩波書店)という本の田中茂樹さんによる<解説>に書いてあった話をきっかけにして「額に『あ』を書く話」というのが話題になったことがあったんです。
■ああ。身体に書いた字の認知という話では、下條先生が詳細な研究をされたはずです。MITにいらっしゃった頃のお仕事で。東大の池上先生に教えていただきましたが、本当にあらゆるポーズで体の色んなところに字を書いて、どんな風に字が感じられるか、裏返っているとか寝ているとか(笑)。
○そうなんですか。その論文は是非拝見してみたいです。あの話は、誰でもすぐに実験というか体験できるので、非常に分かりやすいんですよね。
■脳のなかの身体表現ですか。入来先生にお話いただくべき話題ですが。身体や手足を動かして生きていくのに便利な身体表現がいろいろある、というイメージを僕は持っています。生の身体そのものの表現というのは実は希薄で、外部との関係で表現されている、ような気がします。 ○はい。
■左上部頭頂葉に障害がある患者さんで、眼で見ないと自分の右手と左足がどこかに消えてしまう、という症状が生じたそうです。目で見ると再び戻る、という点がたいへん珍しい症状だそうですが、この方の場合、空間のどこにあるかがわからない限り、自分の手足があるのかどうかもわからなくなるようです。 ○ほう。それは最初から神経回路網で実装されてるんですかね。
■やっぱり後天的に学習するんじゃないですか。 ○そこが良く分からないところなんです。もちろんそういう後天的な学習のメカニズムももちろんあるんだと思いますし、ほ乳類ではそれが支配的なのかもしれない。けれども、いっぽうで昆虫の話とか聞いていると、とても全部後天的だとは思えないんですよね。 ■昆虫はたぶん殆ど作り込んでますよね。 ○ええ。まあ昆虫と高等生物はぜんぜん違うよっていう話もありだと思いますが、その一方で、逆にね、昆虫でさえできるのになあ、とも思うんですよ。だって昆虫の脳ってボールペンの先くらいしかないのに……。 ■昆虫の脳のなかにも色んな座標系があるんですかね。 ○どうなんでしょう。分からないですけど。そもそも昆虫でそれを調べている人がいるかどうかも知らないですが。 ■うん。でも飛んでいくもんなあ。神崎先生に聞いてみたいですね。
○ええ。僕が不思議に思っていることなんですが、よく運動は学習で色んな神経回路網が獲得されていくんだという話がありますよね。でもね、昆虫を見ているととてもそうは思えない。昆虫は、蛹から成虫になって、いきなり飛んでいくじゃないですか。バタバタなんてほとんどしない。学習しているとはとても思えないんですよね。 ■そうですね。確かに。 でも、ほんとに、分からないな。ごめんなさい、答え知りません(笑)。 ○(笑)。
■ところで視覚受容野が動く話のついでに、サッケードの時に視覚受容野がとぶっていう話はご存じですか。 ○うーん、聞いたことはあるような。 ■一個のニューロンの活動を記録して、固視点に対してどこに視覚刺激を出すと発火するかっていうのが視覚受容野です。 ○つまり、一個のニューロンが発火する視覚刺激の範囲のことですよね。
■例えば固視点の右上に受容野があるような頭頂葉のニューロンの活動を記録していると思ってください。ここからここへサッケードした後の受容野は、新しい固視点の右上に行きますよね。サッケードする前の受容野は、古い固視点の右上だと思いますよね。ところが、サッケードの100msくらい前からサッケードが起きる前に、すでに将来の固視点の右上の刺激に反応するんです。つまり、受容野は網膜の上に固定していなくて、サッケードの直前には、サッケード後の受容野の位置まで先行して受容野が跳ぶんです。 ○どうなんでしょうか。 ■この話は、サッケードの間の時間を埋め戻すという先ほどの話と、裏腹な感じがしますよね。どうメカニズムとして繋がるのか。具体的なアイデアはないんですけども。「時間は止まり、空間は飛ぶ」みたいな感じですよね(笑)。不思議ですね。座標系はどうなっているのか。謎だ。 ○次号へ続く…。
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