NetScience Interview Mail
1999/01/14 Vol.036
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◆This Week Person:

◆Person of This Week:
【中田節也(なかだ・せつや)@東京大学 地震研究所 火山噴火予知研究推進センター 助教授】
 研究:火山岩岩石学
 著書:『火山とマグマ』(共著、東京大学出版会)
    『防災』(共著、東京大学出版会)
    ほか

 ホームページ:http://hakone.eri.u-tokyo.ac.jp/vrc/nakada/index.html

○火山の研究者、中田節也氏にお伺いします。火山研究のこれからについて。
 7回連続予定。(編集部)



前号から続く (第6回/全7回)

[17: 雲仙これから]

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○火山の研究っていうのには、色々な側面があるじゃないですか。マスコミに出やすい面もあるけれど、その一方で先生達が本当にやっていらっしゃる研究というのは全然違うわけですね。そこには凄いギャップがあるんだなあと思いました。

■ありますよ(笑)。僕自身が専門にしていることと、雲仙で携わってきたことっていうのは必ずしも1:1じゃないんですよね。自分の専門としていることよりも、その外側のことを結構やってきたんですよ。雲仙では。だけど、それは結局、最終的には自分がやりたいところがあったからですね。それはそれなりで良かったんですよね。

○今はどのくらいの頻度でフィールドに行かれているんですか?

■いまはあんまりいかないですね。噴火したらその山に行きますけど、半年に一回くらい雲仙に行くくらいですか。

○いま、雲仙ではまだどういうデータが出るんですか。

■僕自身が雲仙へ行って調べるのは、噴出物の堆積構造とかね。あるいはもっと地下の情報を与えてくれそうな溶岩を、ドームのところまで採取しに行くとかね。

○じゃあドームのデータも、まだまだ採り切れてないものなんですか。

■ああ、そりゃそうですよ。きちんと噴出した順番を追って溶岩が採れれば、地下のことをもっと時間を追ってわかるかもしれないですから。

○それは、ドームがあると、そこに層状の構造をなして残っているとか? どういうふうに残っているんでしょうか?

■いや、中にはそういう奴もあるかもしれないけど…。
 要するに、溶岩が出てきたときの日付が欲しいわけですよ。採ってきた石が、何月何日いつ頃に出た溶岩なのかということを知りたいわけですよ。例えば、ある火砕流は何月何日ここを流れた、っていうのありますよね。それはあとから行ってみてもそこにある。そこの石をとってきて、何月に流れた岩石だから、っていうことで分析をする。で、前後の岩石と比較をしてみるわけです。どのくらい時間的変化があって、化学組成がどう変わっているか、結晶の量が増えているとか少ないとか、そういうことをやるわけです。

○ええ。

■溶岩ドームのほうは、今残っているのは最後に出てきた奴がほとんど上を占めているんですね。で、一番最後に出てきたときに、真ん中にでかい岩脈が表に出てきたんですけど、そういうのを採ってくるわけです。その中の構造を見てみると、もっと深いところでできた割れ目とかが見えているんですね。そこからサンプルを採ってきて、割れ目がいつできたかとか、結晶はいつできたかとか、泡がいつ潰れたとか、そういう前後関係を慎重に読みとるわけです。

○ふむふむ。
 一言で「翻訳」してしまえば、「ビールの栓抜き」をして、出てきた泡やビールを瞬間冷凍したものを、あとから拾い集めるわけですね(笑)。

■そうですね(笑)。

[18: 結局、何が分かっているのか?]

○今はまだ、それぞれの火山のプロフィールみたいなものも描けていないんですか。

■全然描けてませんね。それは雲仙と、セントヘレンズと、なんとかとって言っている段階ですから。雲仙の何年の噴火と、どこそこの何年の噴火を比べて、っていう段階ではないですよ。

○そうすると、「何が分かっているんでしょうか?」とお聞きしたくなってくるんですが…(笑)。

■何が分かっているか。うーん。
 要するにマントルでできたマグマが地上に出てきていると。おおまかに言ってしまうとそれだけですよ。地殻をどれだけ溶かしたか、ってこともある程度分かりますけどね。そういうマクロな目で見るか、もっと噴火のダイナミクスに結びつけてミクロに考えるか、ということで「何が分かっているか分かっていないか」、ということは違うんでしょうね。

○噴火のダイナミクスとは脱ガスのメカニズムとかのことですか。

■ええ。
 逆に言えばね、そういうことは誰も今までやっていないんですよ。モデルはあって、こうなれば爆発的になるんじゃないか、こうやれば非爆発的になるんじゃないかっていうけれど、それを深いところでは誰も定量化して議論していないんですよ。この噴火のときはこうで、このレベルで発泡が突然起こり始めるとか、マグマが減圧したとき、どれだけ発泡、脱ガスが起こるかということは、誰も定量化していないんですよ。その辺を明らかにしないと、「本当に火山の噴火様式をコントロールしているのは何か」ということは分からないはずですよ。

○定性的なことは分かっているけれども、ということですか。

■うん、本当に定性的な話はある程度分かっているわけですよ。マグマの粘性っていうのはこういうことで決まっていて、爆発性の奴は揮発成分が多いんだ、とかそういう言い方はできるんですよ。でも「本当にマグマの粘性っていうのはマグマの組成によるのか」というと、それは「ハテナ?」なんですよ。それから、「揮発性成分が多いと爆発的になるのか」というと、それも「ハテナ?」なんですよ。

○ふーむ…。

■だから、どれだけ話を掘り下げて見ているか、ということだと思うんですよ。ある面では、こうやって噴火は起きますよ、って言えるわけですよ。マグマが結晶作用して、下のマグマ溜まりの圧力が高まるために、あるいは下から注入されるために噴火が起きるんだ、と。それが答えだと思ってしまえば、そこでストップなんですよ。

○先生の体感ではどうですか。

■まだまだ分かんないぞ、でしょうね。
 ていうか、今のような考え、今のような発想のレベルの転換っていうのが、どうも一斉に起こっているんじゃないかと。いまの地質学、火山学、地球科学全体がレベルの転換に遭遇している時期だと思うんですよ。つまり、一昔前のことはほとんど全て解明されてね、それよりも、今から何をやるかっていうことを考えたときに、もっとレベルの違うことをやらないと、とても科学は発展しないんですね。
 いまの日本全体、世界全体の地球科学のレベルっていうのは、どうもその辺にある。行き着くところに行ってしまって、次にどのステップで新しい見方をするか、その辺を模索しているんでしょうね。

○ふーむ。

■ 今の火山学も全くそうであって、非常に教科書的にはある程度解明されたわけですよ。マントルが溶けて、上昇してきて、マグマ溜まりができて、こうやって噴火が起こると。そういうことはもう分かったわけですよ。でもそういうことにもっとレベルを掘り下げて考え始めると、分かってないことばっかりであると。そういうのが、学問的な今の状況であると思います。

[19: 記載から一歩進んで]

○もうちょっと細かいところでやっていく…?

■いや、発想を違えたところでやっていく、ということです。

○発想が違う…。本当に違うんでしょうか?

■まあ、どこを目指すかというレベルの違いと言ってもいいかもしれない。

○それは例えば、先生方の世代と、また一つ上とでは考えていることというのは違うんですか?

■違うでしょうね。少し前の世代の人っていうのは、必ずしもそうじゃないけど、外国から輸入したような手法とアイデアで、いろいろ記載的なことをやって、一通りの成果を挙げると。記載学を仕上げると。

○ふーむ。

■いまはそれがもう限界に来ていて、そういうこともあって、理科全体の新鮮味を訴えられなくて、だから若い人の興味を引くこともできないんじゃないでしょうかね。

○でも一方で、火山のほうは見えていないわけだから「記載もできていない」という言い方もできるんじゃないですか?

■うん、だからどれを記載と捉えるかですよね。だからこうこう噴火しました。こういうのが出ました、この時の溶岩の組成はこうですとやるのが記載ですよね。そこから一歩進めて何を考えるかですよ。

○時間軸を持ち込んでやって、どういう風に変わってきて、このときこういう圧力であったとか、こういう環境下でこの岩石は作られましたってやることも記載なんじゃないかな、と思ったんですけど。

■それは記載でしょうね。だけど、そのときに、こういうものができてこういうものができた、だけどこのときにこういう噴火をしているし、こっちではしてない。それはなんでか、っていうのは…、まあモノの見方によりますけど、どこまで掘り下げるかですよね。
 今までは、定式化されてきたものしかやっていない、という印象があるんですよね。っていうかその、何かフォーマットに沿ったものしかやっていない。そこから一歩進んで、ちゃんと地球科学やんないと、どんどん理科離れも進むし(笑)、学問も進まないわけです。そういう感想を持つんですけどね。

○ふむふむ。

[20: これからの火山学]

○火山学をやる人っていうのは、どこから流れて来るんですか?岩石学ですか?

■えーっと日本で言うとね、日本の火山学やっている人の7割がたは地質学科出身ですよ。その残りは地球物理ですね。

○地球化学は?

■ああ、それはさらに少ないですね。一割に満たないくらいじゃないですか。だけど本当の火山学は、天文学とか気象学とか、その辺も全部入るべきでしょうね。海洋学もひょっとしたら入るかもしれない。

○どうしてですか?

■うん? 噴火現象とか考えると、火山灰が気象にどう影響するかとか、そういうことも火山学に含めるべきでしょうから。日本の場合は、噴火して、ものが堆積するところを中心にやる人が多いから。そういう意味で地質屋さんが圧倒的に多い。

○地球物理の人はどういうアプローチで?

■リアルタイム火山学ですよ。

○え?

■リアルタイム火山学。地震活動、地殻変動、電磁気学とかもあるけど、とにかくリアルタイムに火山の情報を取り出して、それを解析するわけですよ。

○ふむふむ。山体がどう変化したかとか、電気抵抗がどう変わったかとか、磁気がなくなったとかやるわけですね。

■そうそう。そういう意味ではリアルタイムでしょ。それに対して地質のほうは何十万年まえとか遡った話をしているわけだから。

○なるほど。…でも、先生のやり方っていうのは、その両方に入らないんじゃないですか?

■ああ、だから僕は中間領域をやっていると思っているわけ。リアルタイム地球物理学と、そのデータを地質学的に捉えるというのを目指しているんですよね。

○そうですね。

[21: 伊豆大島]

○先生はいま、雲仙以外には?

■伊豆大島ですね。なんで伊豆大島をやっているかというと話は簡単で、地震研の観測所があるからなんですよ、一つはね。で、過去も伊豆大島やっている人がいて。地震研究所に来たからには伊豆大島やらなくちゃいけないな、というのもあるし(笑)、それと最近、伊豆大島のカルデラでボーリング掘ったんですよ。それが、いわゆる「火山の底」まで達しましたからね。これで火山全体の試料が採れてますから、伊豆大島の出来方をちゃんと議論したいと思っているんですよ。これも学生もつけていろいろやってます。

○ホームページに資料がありますね。

■ええ、あれです。
 でもあれは噴火のメカニズムっていうよりも、マグマがどういう風に変わったかでは面白くないな、マグマのインプット、あるいは個性がどう推移してきているかというのをきちんとやりたいなと思っているんですよ。カルデラができたときには例えばマグマ自身ではどういう変化が起こったか。マグマ溜まりが潰れたために、ある時期から結晶化作用の仕方が違うとか、脱ガスが一気に起こったために、できる結晶の種類が違うとか組成が違うとかね、そういうことが読みとれるんじゃないかと思っているんですよ。

○なるほど。

■でも、そういうヒストリーは、けっこうあちこちの火山でやられているんですよ。たとえば古い石を順番にとってきてやってね、いろいろ化学組成を調べて、あるいは結晶の量がどう変わって、こうこうこういうときはマグマがどういう状態だったか、ということを探ったりすることはね。

○ふーむ。

次号へ続く…。


[◆Information Board:イベント、URL、etc.]

■イベント:
◇文部省特定領域研究高次脳機能のシステム的理解 第3回公開シンポ 思考と感情
1 月 23 日(土)10:00 -16:30  場所:銀座ガスホール 申し込み不要、無料
http://www.ics.kyoto-su.ac.jp/~fujii/JHomePage5/WinterSympo.html

■URL:
◇「のぞみ」の新軌道計画(宇宙科学研究所)
http://www.planet-b.isas.ac.jp/orbit.html

◇マウス遺伝子エンサイクロペディア・インデックス
―マウス遺伝子2万種類の部分塩基配列データを公開―(理研)
http://www.riken.go.jp/KOHO/PRESS/p99.1.11.html

 *ここは、科学に関連するイベントの一行告知、URL紹介など、
  皆様からお寄せいただいた情報を掲示する欄です。情報をお待ちしております。
  基本的には一行告知ですが、情報が少ないときにはこういう形で掲示していきます。
  なおこの欄は無料です。


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編集人:森山和道【フリーライター】
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